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花の香りに酔う如く
第8章 金木犀の香りほどの不安②〜律

「玉露を淹れますね?」と言った沙羅ちゃんは、
優雅にお手前をして、
5人の男性にお茶を出していた。
僕が茶室に入ると、
少し緊張しながらお茶を飲んでいたうちの1人が、
「あっ!」と声を上げた。
「皆さん、ようこそ。
住職は留守なので、
私からご挨拶させていただきます。
沙羅がお世話になっております」と、
法衣姿でお辞儀をすると、
みんなも慌ててお辞儀をした。
「先生も先輩も、
脚を崩してくださいね?
男性はお茶席では胡座をかいても良いとされてますから…」と沙羅ちゃんが笑う。
「お坊さんだったんですね?
なんか、てっきり…」
「その筋の人とでも?」と僕が言うと、
声を上げた男子が頭を掻いた。
「大会の出場がと、心配させてしまったようで、
申し訳なかったですが、
こちらは禅寺ですので…」
「沙羅ちゃんのお兄さんなんですか?」と言われて、
沙羅ちゃんが僕の顔を見つめる。
「いえ。
古くから懇意にしているお宅のお嬢様で、
こちらの寺に寄宿してもらっているんですが、
家族みたいなものかな。
近々、プロポーズする予定なんです」
沙羅ちゃんが固まっているけど、
男子学生が、
「おおっ!」と声を上げる。
「だから、毎日、迎えに来てるんですね?」
「ええ。
大学構内で、危ない目に合ったと聞いたので。
私が在学中は、
そんな輩は居なかったのですが…」
「卒業生なんですか?
先輩なんですね?」
とか、
「構内では、俺らが守りますよ」
と言ってくれる。
「なんか、押し掛けちゃってすみませんでした」と言いながら、
みんなが帰るのを2人で見送った。
茶室に戻ると、
沙羅ちゃんは煎茶道の小さなお道具を洗って拭いていく。
そして、
「律さんはお抹茶の方が好きですよね?
点てますね?」と言うと、
萩焼の抹茶茶碗を出して薄茶を点ててくれた。
きめ細かい泡が優しい甘さを引き出しているようだった。
沙羅ちゃんは自分の分もお茶を点てて飲むと、
クスリと笑って、僕の顔を見て言った。
「あのね。
律さん、近々って、いつですか?」
優雅にお手前をして、
5人の男性にお茶を出していた。
僕が茶室に入ると、
少し緊張しながらお茶を飲んでいたうちの1人が、
「あっ!」と声を上げた。
「皆さん、ようこそ。
住職は留守なので、
私からご挨拶させていただきます。
沙羅がお世話になっております」と、
法衣姿でお辞儀をすると、
みんなも慌ててお辞儀をした。
「先生も先輩も、
脚を崩してくださいね?
男性はお茶席では胡座をかいても良いとされてますから…」と沙羅ちゃんが笑う。
「お坊さんだったんですね?
なんか、てっきり…」
「その筋の人とでも?」と僕が言うと、
声を上げた男子が頭を掻いた。
「大会の出場がと、心配させてしまったようで、
申し訳なかったですが、
こちらは禅寺ですので…」
「沙羅ちゃんのお兄さんなんですか?」と言われて、
沙羅ちゃんが僕の顔を見つめる。
「いえ。
古くから懇意にしているお宅のお嬢様で、
こちらの寺に寄宿してもらっているんですが、
家族みたいなものかな。
近々、プロポーズする予定なんです」
沙羅ちゃんが固まっているけど、
男子学生が、
「おおっ!」と声を上げる。
「だから、毎日、迎えに来てるんですね?」
「ええ。
大学構内で、危ない目に合ったと聞いたので。
私が在学中は、
そんな輩は居なかったのですが…」
「卒業生なんですか?
先輩なんですね?」
とか、
「構内では、俺らが守りますよ」
と言ってくれる。
「なんか、押し掛けちゃってすみませんでした」と言いながら、
みんなが帰るのを2人で見送った。
茶室に戻ると、
沙羅ちゃんは煎茶道の小さなお道具を洗って拭いていく。
そして、
「律さんはお抹茶の方が好きですよね?
点てますね?」と言うと、
萩焼の抹茶茶碗を出して薄茶を点ててくれた。
きめ細かい泡が優しい甘さを引き出しているようだった。
沙羅ちゃんは自分の分もお茶を点てて飲むと、
クスリと笑って、僕の顔を見て言った。
「あのね。
律さん、近々って、いつですか?」

