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ただ一緒に居たいだけ
第18章 別れと始まり
恵吾さんの物語を書く為に、
ずっと読めないままだった健吾さんの手帳を手にしてみては、
結局、読めない日が続いていた。


それに気づいた慎吾さんが、
「一緒に読んでみる?」と言ってくれる。


私達は、夜、眠る前に少しずつ読んで、
その後、私が笑ったり泣いたりするのを優しく見つめてくれる慎吾さんに抱き締められて眠るのが日課になった。



私と初めて会った時の気持ち。

慎吾さんの私への想いに気づいたこと。

それでも久し振りに感じた恋愛感情への戸惑い。


どれも、真面目な健吾さんらしかった。



ゲームのことに気づいて、
調べてこっそり始めてみて、
私のキャラクターに会った時、
キーボードがなくてチャットが出来なかったこと。

いつも、私の庭でぼんやり私を待っていたこと。


今、思い出しても、
クスクス笑ってしまう。


初めてキスしたこと。
初めての夜。


今でもときめいてしまうほど、
鮮明に覚えている。


その前後に、
慎吾さんとも、そういうことがあったのも、
今にしても思うと…。


慎吾さんが、
「ごめんね?」と私を抱き締める。



私は首を横に振る。


「あのね。
私がドアを開けたのよ?」と静かに笑う。


「あの時は…。
本当に美波さんが好きで、
でもオヤジの匂いがしてて、
ヤキモチ焼いて、
どうしても俺のモノにしたくて…」


「過去のことじゃない?」
と笑うと、


「今も好きだよ?
それは変わらない」


「やだ。
もうオバサン通り越して、
おばあさんに近づいてるのよ?」


「美波さんは、
全然変わらない。
今でも凄く可愛くて、
綺麗で素敵だよ?」
と額にキスをする。


「もう!
慎吾さん、褒めすぎよ?」


「あの後、
あいつが妊娠してるって言ってきて、
美波さんと連絡も取れなくて、
結局、あいつと結婚したけど、
ずっと美波さんのことを考えてた。
だから…。
あいつが出て行ったのは、
俺にも原因があったのかもしれないとどこかで考えてた」



そう言って、
慎吾さんは私を抱き締めてそっと瞼にキスをした。



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