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先生の言いなり
第8章 - Ep.7 ムカシバナシ -
私が先生と出会ったのは、この花井学園に入学して3ヶ月が過ぎた頃期末テスト最終日だった。

高校に入って慣れてきたのもあったのか、いつもより怠いなぁと感じていた。しかし気の所為だと自分に言い聞かせテストを受けていた。
その時のテスト監督の先生が沢渡先生だった訳。


「(あー…やばいかも。頭が痛い、呼吸が苦しい。目が霞む)」


滅多に体調なんて崩さなかったからなのか、高熱に身体が完全にやられていた。
頭痛、全身の倦怠感…コンディションは最悪だ。
目の前の答案用紙にすら集中できない。

シャープペンシルが音を立てて机の上から落ちる。

「…大丈夫か?」

「…はい」

拾いに来た先生とそこで初めて目が合った。
心配そうにこちらを見る先生、シャープペンシルを拾い私に差し出す。
受け取ろうと手を伸ばした時、私はそこで意識を飛ばした。







気づいた時、私は保健室のベッドで目を覚ました。
白い天井、消毒液のにおい。ゆっくりと体を起こせば白衣を着た保健医の先生が気づいてコチラへ歩いてくる。

「成海さん、良かった。目、覚めたのね」

「あ…はい。あの、私」

「テスト中に倒れたの。沢渡先生がここまで連れてきてくれたんだけど…大丈夫?」

「大…丈夫です」

「はい、体温計。もう一度熱計って? 」

「はい」

制服のブラウスのボタンを第二ボタンまで外し、脇の下に体温計を挟む。そのままぼーっとベッド下に揃えて置いてある上履きを見つめていればピピピッと電子音が鳴る。

脇の下から取り出せば37.8℃を示していた。体温計を受け取った保健医の先生が首を捻り困ったように呟く。

「んー。まだ少しあるわね、親御さん迎え来れる?」

「…いえ、母に迷惑かけられないんで」

「そう言っても…熱ある子を戻らせる訳にはいけないのよ」

「私なら大丈夫ですから」

保健医に大丈夫と繰り返し告げるも、あまりいい顔はされず途方に暮れてしまっていた。
そんな時保健室の扉が開き誰かが入ってくる。

「松永先生入りますね〜」

「はーい。 あら、沢渡先生」

私のベッドの側から離れ、入口の方へ出た保健医の先生が沢渡先生の名前を呼ぶ。思わず布団を被り顔を隠す。
シャっとカーテンの開く音がして上から「大丈夫か?」と声が聞こえれば少しだけ布団をずらして目だけを出し頷いた。
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