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先生の言いなり
第3章 - Ep.2 ジッコウ -
そんな悶々とした日々を過して早数日。
すっかり日も暮れてしまって真っ暗な外、こんな日に限り鍵当番で。
更には鍵締めを遅くさせる要因がシャワールームにあった為更に帰りは遅くなっていた。

「ホントついてない…」

盛大に溜息をつき、職員室に鍵を返しに行く。
暗い廊下を進んだ突き当たり、ぽわっと蛍光灯の明るい光が漏れている。
ふっと職員室内を覗けば殆ど先生は居なくて、みんな帰った様子。
そんな中、珍しく沢渡先生が職員室に居て、その向かいには一人男子生徒が俯いて座っていた。

思わず入口のドアのところに隠れてしまう。
やましいことをしている訳じゃないのだから隠れる必要性は無かったのだが身体が勝手に動いてしまった。

チラチラと中の様子を伺っていれば、気づいたことがある。
沢渡先生の表情がいつもと違う。
ニコニコの笑顔ではなく、口元だけ笑ってて目は獲物を捕らえたかのような冷たい目。

じっと何も話さず、相手を貫くような視線。

「…っぁ」

普段の先生からは想像できない姿、背筋にゾクゾクとしたナニカが走った。
ごくんと自分が生唾を飲み込む音がやけに大きく聞こえて、スカートの裾を思わずきゅっと握り締める。

(私も、あの視線を向けられたい)

そんな思考と、思わず胸元に伸びてしまう手。
あの視線で…一人でなんて思った時、背後から声をかけられ、肩が跳ねる。

「びっ、くりしたぁ…コーチか」

「何してんだ?お前」

「や、なんでもないです。鍵、返しに来ただけなので」

「ん? ああ。今日は成海が当番だったのか!戸締りごくろーさん。俺がこのまま鍵もらうぞ」

「ありがとうございます」

「気にするな〜、気をつけて帰れよ」

そう言ってヒラヒラと手を振り職員室の中へと入っていくコーチ。
その後すぐ、沢渡先生と話す声が聞こえたかと思えば先程俯き座っていた男子生徒が涙目で出てきた。

目が合うと気まずそうに逸らさせ、足早に去っていく彼に少しだけ「良いな」と思ってしまった。
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