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貴方を諦めます
第19章 動き出した心

──────…



土曜日、私はいつものように化粧をして正樹の迎えを待った。


約束の時間になると、スマホを見ていると“着いた”とだけLINEが届いた。



重い足取りでエントランスを抜けると、外には見慣れた外車が停まっている。

正樹の車だ。



そっちに駆け寄ると、窓が開いて“乗って”とだけ言われる。


助手席に乗ると、車は走り出した。


「久しぶりだな香織」

「久しぶり、元気だった?」

「香織に振られて落ち込んでた」




聞くんじゃなかった。


正樹は見た目もカッコイイし、仕事もできるから絶対モテる。

だから私と別れて半年も経ってるから、もう彼女はいると思ってた。


「ごめんね…」

「冗談、そんなしんみりすんなよ」



分かってる、私に気を使って言ってるだけってことも。

正樹は沢山愛してくれてたし、いつも優しかった。



ただ、私が同じくらい愛を与えることができなかったし、結婚を意識したことがなかった。

そんな時に正樹が楽しそうに結婚の話をしてくるから、それに耐えられなかった。
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