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貴方を諦めます
第20章 通じ合う心
正樹に最後のお別れを言った後、車から降りてマンションのエントランスに入ろうとした時──



「香織っ…!」


力強く手を引かれてビックリした。


「涼ちゃん?」


涼ちゃんは何も言わず、手を繋いだままエレベーターに乗って私の部屋の前まで来た。


鍵を開けて部屋に入ると、靴を脱ぐ前に抱き締められておもわず持っていたバッグを落としてしまった。




「アイツのとこに戻るの…?」




アイツ…?正樹のこと?

もしかして車から出てくるところ見られてたかな。



抱き締められている腕は力強いのに、少し震えているような気もした。



「行かないで…」



声も少し震えているような気がして、私の腕は自然と涼ちゃんの背中に回った。



「涼ちゃん、部屋行こう?」



玄関で話をするのはなんだか落ち着かないし…。


涼ちゃんから身体を離すと、少し嫌そうな顔をされた。


そんな涼ちゃんの手を、今度は私が引いてソファに座らせる。
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