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私のお部屋
第2章 家出
この家にいて
あのふしだらな女と同じ空気を吸うのも嫌だった。
『とにかくこの家を出ていこう…』
先の事などなにも考えていないけれど
行動を起こせば何とかなるわと
由香は身の回りを大きなバッグに積めると
夜更けにママが寝室に入ったのを確認すると
足音を忍ばせて
住み慣れた我が家を後にした。
行く宛もなく
かといって学校の友人宅を訪ねても
ママはその子たちの連絡先も知っているので
すぐに足がついてしまうだろう。
誰かママの知らない人を…
『あ、一人いた!』
部活動でお世話になった良美先輩なら…
池崎良美は家族とそりが合わず
高校を卒業してすぐに飛び出して
今は自立して部屋を借りて独り暮らししてた。
由香はスマホを取り出すと
良美先輩にSOSを発信した。
数回の呼び出し音のあと
『はい…』と眠そうな気だるい声が返ってきた。
「あ…良美先輩?」
『誰?』
由香の番号を登録していないのだろう
スマホ画面に自分の名前が表示されていないんだわ
番号を登録されていないほど
付き合いが希薄なんだけど
他に頼る人もいないので
由香は思いきって名乗った。
『由香ちゃん?
部活で一緒だった由香ちゃん?』
良美先輩は由香を覚えていてくれたようで
思わず安堵して泣き出してしまった。