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ドン亀スプリンター
第2章 ファーストコンタクト
 翌朝。
 昨日より一時間早く起きた俺は前日用意しておいたジャージに身を包みディパックを背負う。
 ワンワンワンワン!
 散歩に出かけると思ってじゃれてくる毛玉を無視して玄関の鍵を掛ける。
 今日はお前に構ってる暇はないんだ。
 まだ日が上りきってない薄暗い道を早足で公園に向かう。
 例の茂みの中に入るが今日はセーラー服はなかった。
 予定通り先回り出来た。
 昨日身を潜めた茂みに入るとディパックからブルーシートと小さなクッション。そして大砲の様な望遠レンズを着けた一眼レフを取り出す。
 ブルーシートに寝転びクッションに肘をついてカメラを構える。
 望遠レンズの先は敢えて茂みから飛び出させている。
 さあ、順次万端。早く来い露出狂中学生。
 1分、5分、10分。
 昨日も思ったが今日も時間の流れが遅い。
 誰か秒針に鉛の錘でも付けたのか?
 ジリジリしながら時が来るのを待つ。
 今日は来ないのかもしれない。
 不安が過る。
 そりゃそうか。
 もし仮に俺の思う通り露出狂だったとしても毎朝欠かさずここに来るとは限らない。
 むしろ一旦冷静になって覗かれた事が怖くなって足が遠退いた。こちらの方が現実的にありそうだ。
 そうだな。
 6時。
 そこまで粘って駄目だったら諦めて帰ろう。
 ガサリ
 音がしたのは覚悟を決めてから10数分経った時だった。
 茂みを掻き分け現れたセーラー服の少女。
 間違いなく昨日の娘だ。スポーツバックと学生鞄を地面に置いた彼女とファインダー越しに目が合う。
 さあ、勝負だ。
 茂みから突き出たレンズに目が釘付けになり動きが止まった少女。
 ここでキャー!と叫ばれたり逃げ出されたりしたら俺の敗けだ。最悪両手が後ろに回る事になる。
 さあ、どうする?
 固唾を飲んでビューファを睨んでいると少女はスポーツバックのファスナーを開きレジャーシートを取り出し広げた。
 よし!
 いいぞ!
 ローファーを脱ぎ胸のリボンに手が掛かったところでシャッターを押す。
 カシャリ!
 大きな音が静かな公園に響く。
 まったく。電気的に映像を記録する機械になんでこんな音がするのだろう。
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