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ターゲットはシニア
第5章 その4
「おい、看護婦を連れてきたで。看病してもらいや」
 少年は暗がりに向かってそう言った。だけど返事はない。
 次に少年は私に顔を向けた。
「殺すなや。死んだらおばはんのせいや。ここにな、」と突然、私のお尻の穴のあたりに指を突っ込もうとしてみせて、
「手ぇ突っ込んで腸を引き出したるさかいな!」と凄んでみせた。

「わ、わかりました」私は震える声で答えた。

「薬はいろいろ置いてあるけど、他に何か必要なもんがあれば言いや。わいはもう行くけど、逃げようとしなや」

「その、もう少し部屋を明るくはできませんか?」と、私は思いきって聞いた。

「暗いのはあいつらが灯りを点けんからや。スタンドライトはあと二つあるから」
 そう言いながら、少年は部屋を出て、ドアを閉めた。
 ガチャン。

 私は寝ている二人より先に、スタンドライトを探した。

 私の目は暗がりに慣れて、ようやく部屋全体を見回せるようになった。
 右手、灯りが点いている机の後ろ側にファイル棚があり、そこにスタンドライトが一台あるのが見えた。窓側には畳が敷かれてあり、その逆の通路側に食堂テーブルがたたんで積み上げられているけれど、その上にあるのは薬箱かしら。
 私は左手にあるキッチンに足を向けた。水道は・・・水が出た、使えるみたい。流し台の横手に顔を傾けると、スタンドライトが見えた。私はそれを手に取って、寝ている誰かのところに移動した。

「ねえ。大丈夫ですか?私も騙されてここに連れて来られたんですけど、あなたたちを看病しろって・・・」

 私の声に、もぞもぞと布団代わりの布切れから顔を出したのは、若い女性で裸みたい。

 私はあらためて声を掛ける。
「あなたも騙されて?そりゃそうですよね。ええっと、いつからここに?」

「わからない。もうひと月は経ってるんじゃないかしら」

 すると横からもうひとりも顔を出した。やっぱり裸で、痩せて青白いその顔は・・・子どもじゃないの!

「香織さんは今日で二週間です。一ヶ月いるのは私です」



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