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第3章 救いの手

「黎佳？今日も夕飯一人で食べられる？」

「…ああ、うん。大丈夫だよ。スミレちゃんがくれたお金で、パン買ったよ」

スミレちゃんの声を聴いただけで少し心強くなった私は、平静を装って答えた。

「あはは、黎佳はほんと、パンが好きね。今日も遅くなるから先に寝てて。鍵はちゃんとかけてね。日曜日は休めそうだから、ホテルのダイニングでメロンパフェごちそうしてあげる。すっごくいっぱい高級なメロンをつかった、エメラルドみたいに綺麗なパフェよ。それまでちょっと我慢してね」

「うん。楽しみ」

「じゃあね」

「あのね…」

言いかけたところで通話が途切れてしまった。

「明日プール開きなのに…」

二週間前から言っているのに、スミレちゃんは何とかすると言い続けて、結局水着を用意してくれなかった。

私は受話器を戻し、パンの封をハサミで開けて黙々と食べた。

いつの間にかセミの声は止んでいて、今ごろ力尽きたセミが転がっているであろうベランダが怖くて背を向けた。