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横を向いて歩こう
第4章 私たちそんなんじゃないから。
「いいのか、そいつ。」

「良いに決まってるよぉ~。こんなに気が合ってアッチが悪いわけない。」

松下がうちでネクタイを緩めてお茶を飲んでいる
なんか資料を持ってきたとかで
上がってく?ってなって

深い意味はないのに
何故かいつもこの男はあたしの傍に居る

そしてこうして何の警戒もなく部屋に上げるあたしもあたしなんだけど


実際まだ健人とはキス止まりで
警戒でもなく躊躇でもなく
大切にしたいって一心だった
慎重に慎重に

このあたしがまだ焦らしてる
この欲深いあたしが
好きな人にはすぐ捧げたいタイプだったのに


ただの同僚、の松下には何でも話せた
元カレのような扱いだった
実際そのようなものなのかもしれない
みんなが噂するから否定してたけど
案外元カレポジションでも悪くないなと思ってしまう

「ねぇ、彼もうちら疑ってる。」

「へぇ。」

「もうさ、この際さ、そういうことにしちゃおかなって。だって否定がめんどくさいし。」

「確かにな。俺もいまだに言われるわ。もうもはや雑談のネタだよな。何でもないのにな。」

「ほんと、何でもないよねぇ。」

あたしも横に座ってお茶を飲む

何の違和感もない私たち



程好くまどろんできた頃インターフォンが鳴る

「はーい。」

ドアを開けると弟が立っていた




太一の言い分はこうだ
アパートの水漏れがはひどくて居られなくなって
姉ちゃん頼む次が見つかるまで置いてくれ

「えー、彼女んとこ行きなさいよ。」

と言いつつあたしもしっかりものの太一に頼られると嬉しい

太一は自分の言いたいことを言い終えると早速スーツケースから歯ブラシやら洋服やら出し始めた

そしてソファに寄りかかって寛いでいた松下にやっと気づいて2度見する

「お、おぉ!びっくりした。だ、誰?」

「はじめまして幸子の元カレです。」

あたしは吹き出す

太一も吹き出した

「え、えぇー!どうもはじめまして。ん?てゆーか姉ちゃんの結婚式来てませんでした?ほんとに元カレ?」

「嘘よ。今話してたの。あたしたち何でもないのに噂が先だって面倒だからもういっそ、何かあっことにしよっかって。」


3人で笑う
あれ、あたし今楽しい
松下が家族のようだった

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