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横を向いて歩こう
第6章 あなたがつけてくれなくても
「兄貴と落ち合う約束しててさ。」

「この辺なんだ。」

泊まりがけの出張だった
出張の晩はいつも美味しいところ行くんだけど

松下にお兄さん居ることは知ってたけど
あまり話に出てきたことがない
わけありなのかな

「じゃああたしはホテルで適当に、、。」

「お前、なんか話あるだろ。」

「え、」

なんでわかるんだろ

「心ここにあらずだったぞ。」

「そうかな。そんなこと、、。」

本当は月の物の心配を聞いてもらいたかったが
兄弟水入らずにさせてあげたい

「いいよ今度で。」

「浮気でもされたか。」

「ふははっ。」

そんなんだったらあたしはこんなに悩んでない

「まっつん、あのね、、。」

話そうとすると向こうから声がした


「まさきー!」

振り向くと松下に似ている男性が立っていた

見るつもりはなかったが
つい、薬指をチェックしてしまう

「こんばんは。」

あたしはにんまりと挨拶をする





結局あたしも兄弟の晩餐に付き合うことなった

「でさ、あいつ娘に会わしてくんなくてさ。」

ほぼ元奥さんの話
さすがに他人の家庭のことを聞くのはうんざりだわ

二時間ほど経った頃
松下が根をあげる

「俺明日早いから。」

「あたしもこの辺で。」


なのに
意地悪な同僚はあたしを一人残して帰ってしまった

二人きり取り残された私は熱燗のお代わりを頼む

「飲むね~。」

「飲みますよ。」

顔が赤らんできた

なんとなくあたしもまだ飲みたい気分だったし

「幸子ちゃんは、、現役だな。」

「何がですか。」

「見た目。」

「お兄さんは現役ですか?」

「俺?この5年嫁としかしてねぇ。」

「じゃあ、、隠居?」

彼が手酌で注ごうとするのを
あたしは遮って注いであげる

「いいねぇ。女の子にお酌してもらうのって何年ぶりだろ。」

そう言ってくいっとお湯割りを飲む

「まあまあ飲んでお兄さん。」

あたしがお代わりを注ごうとすると
今度は彼に遮られる

「お兄さんやめて。」

「じゃあおじさん?」

「パパ活かよ。」

変に居心地がいい


「バツイチってどんな気分?」

「楽しい。けどさみしい。」

「だよな。一度知ってしまってるからな。」

「でも後悔はないです。」

「そっか。」

明るい
あたしは今明るい
お酒は旨い


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