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横を向いて歩こう
第8章 たかしとまさか
労るどころかあたしは奴の唇から逃れるのに必死だった

「さちこ。」

名前で呼ばないで
呼んでいいのはお兄さんだけ

頭を抱えられて足でホールドされて
逃げ場を失っていた

ここでキスするのは簡単だった
何年も経てば拒む方がめんどくさくて受け入れるようになるんだけど
この頃のあたしは純粋だったと思う


「また奪うの?」

意を決して言った
あたしの目は笑ってなかったと思う

けど本心だった
これ以上兄弟仲を壊したくない

松下は一瞬怯むような表情だったが
あたしの頭をくしゃっと撫でると
潔く上着を着て部屋を出ていった


惜しいことしたなって自分でも思う
一度寝た事あるなら何回でも同じ気がした

でも
今のあたしには大切な人が居て

一刻も早く会ってあたしの穴を埋めてほしいと思うのであった



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