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横を向いて歩こう
第2章 1人乗りの人生
急に泣き出したあたしに動揺することなく
彼は急須にポットのお湯を注いだ

初めてあたしの部屋に上がったのに
物の場所を把握しているのが可笑しくもある

「まっつんってあたしのなんなの?」

「なんだろな。」

松下がお茶を注いでくれる

「ただ、話を聞いてほしくて。」

「うん。」

中途半端に手を握ったりハグしてきたり
そんなのは求めてなくて
純粋にそばにいて欲しかった

しかし聞いてほしいと口では言っても
出てくるのは嗚咽と鼻水だった

松下がティッシュの箱を手渡してくる

「なんでティッシュの場所知ってんのよ。」

「見えたから。」

「変態。」

「は?」

やっと笑いがこぼれる

「笑っとけよ。絶対良いことあるって。」

「保証する?」

「うーん、とりあえずそのままで居ろってこと。変わろうとかしなくていいって。最近のお前見てるとさ、なんか急いでるってゆーか。別に駄目とかじゃないんだけど。」

「確かにあたし急いでた。だって寂しい。」

「俺があんなこと言わなきゃ良かったな。」

あたしはキョトンとする
あんなこと?

「嘘だよ。誠くんに次居るとか。」

「へ?」

「見てられなくてさ。仕事でミスも続いてたし。吹っ切れてほしくて、、」

「は?」

あたしの怒りは収まらず
松下に当たってしまう

いくらあたしの為とはいえ
松下の嘘のお陰であたしはどんだけ苦しんだかもがいたか知れない

15分くらい言い合いをしただろうか
仕事で衝突することは度々あったが
プライベートな喧嘩は初めてだったかもしれない

「まっつんなんか嫌いだから!」

「だから、お前に立ち直るチャンスを」

「他に方法なかったの?」

「お前のためを思って。ミスもフォローしてやっただろ。」

「今仕事持ち出さないで。」

「感謝とかねーのかよ。だから誠くんは、、」

松下がそこまで言いかけて黙る
さすがにそれを言ったらまずいと思ったのだろう

その時インターフォンが鳴る

あたしはバサッと立ち上がってドアを勢いよく開けた

「泣いてた?」

目の前には誠が立っていた
今一番会いたくない人だったかもしれない



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