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北の軍服を着た天使
第2章 Episode 2
「あ、社長、忘れてたでしょう?今日13時からウーファ株式会社の人が会社に来ますからね。」
「ウーファ株式会社……?ああ、そうや。完全忘れてたわ!確か中国の会社やったな?」
「そうですよー、これ相手の資料です。インターネットから引っ張ってきました。日本の支社に関しても任意事項までキッチリ登記されていますし、信用できそうな感じですけどね。」
と私が渡したのはA4の紙が5枚ほどホッチキスで留められてある物。
「……へえ、創立60年やったら長いなぁ…」
「ホームページには父親の代から受け継いだ会社って書いてありましたよ。昔は主にドイツからの高級車を扱ってたみたいです。」
「それが何でウチみたいな中古車屋に?」
「それこそ、中国の口コミサイトみたいなんの情報ですけど、5年位前に経営不振で出資者が変わったんですって」
「出資者って事は、実質の経営者やな。」
「そうです。いわば、株主が変わって、新車の高級車を扱うディーラーは大手に勝てないから中古の高級車を扱うディーラーに衣替えしたみたいですよ。で、取り扱いが日本・韓国・アメリカのメーカーの物らしいです。」
「ふーん。まあ良い判断やったかもな。今は、ベンツにしろBMにしろ、ドイツ産とかイタリア産は人気過ぎてめっちゃ出回ってるからな。ネット一つあれば簡単に手に入る時代やし。そんな中でも日本のスカイラインとかアルファードは未だに中国ではトヨタに行くしか手に入らんからなあ。アメリカの車も対外的に中国政府はそんなに輸入してないやろうし。」
中国で、日本の車は凄く人気がある。でも、購入価格も高ければ中古車で出回る価格も日本の相場の三倍は越えている。だからこそ、ウチみたいな小さな所と良い関係を結んで良い物を安く、長く、大量に買取りたいのだろうと大体の想像は出来た。
社長も普段はおちゃらけているけれど、よくニュースを見ているし、実際の所、とても頭が良い人だ。
取り扱い車がアメ車・日本車・韓国のヒュンダイと聞いて、ちゃんと地に足ついた商売をしている会社だと即座に判断したのだろう。
ふーん、ちょっと楽しみやな。と呟いてからセブンスターに火を付ける社長を見ながら私も自分のマグカップへと手を伸ばした。