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北の軍服を着た天使
第2章 Episode 2
ここまでになったら、もうほとんどの辻褄が合ってくる。
セダンの注文が一切無かったのも、今では北の役人車や公人車も中国を習って道の悪い所でも快適に過ごせる様にアルファードの様な高級ワンボックスカーに移り変わっているからなのだろう。ヒュンダイを輸入しているのも韓国側の技術に興味があるからに違いない。
私に❝資本主義❞の話をしたのもそうだ。
北朝鮮ではある程度の年齢になったら、必ず人民班長等の元で国から指定された場所で働く必要がある。それが教育系なのか農家系なのかは、その子の生まれ育った環境によって違うが…。だからこそ、特殊な音楽や芸術といった才能の無い限りダラダラと学生をし続ける事が、彼達には理解出来なかったのだろう。
だから私に、あんな事を聞いたのだ。
取引の会議に彼が来なかったのは、私と彼が会う事により、彼の素性を思い出し契約が破綻──もしくは、通報される危険があると察したからに違いない。そこでタイミング良く中国との話があれば、そりゃあテヒョンと呼ばれる男は私の前から逃げる様にして姿を隠すはずだ。
──今日、アポも無しに私がこの事務所に来た事。そして、インターホンを鳴らす前に道路で彼が私を見かけた事は、ただの偶然に過ぎなかった。
そして、その偶然がこの状況を生んだのだ。