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北の軍服を着た天使
第2章 Episode 2
「テヒョンさん、我々の任務をお忘れですか。」
「忘れてないけどこいつを殺したからって別に俺達の任務に得になる事は無いだろ。」
「ですが貴方も何も言わずに知らぬ振りをすれば良かったものの…こうやって二人の正体がバレてしまった以上、せっかく基盤を作って日本に進出してきたのにこれ以上、外貨を稼ぐ事が出来なくなってしまう。」
「李が思っているほど根性の無い女じゃない。」
「何を根拠にそう仰るのですか。」
李さんと背の高い端正な顔立ちをした男がお互いの目を見て冷静に話し合っているこの風景は、まるで映画のワンシーンのようだった。
「流川リサが板前店で事故を起こしかけたのは、国家安全保衛部のパクが796ナンバーだからといって、横断歩道を渡る女の子を無視し、スピードを緩める事をしなかった事が発端だ。」
「あの日、緊急で38度線付近の会場で俺や総政治局長や国防相が集まる秘密裏の会議があった。李も途中から合流しただろ。」
「……はい」
「会議が始まる前の検問や見回りであの辺りには士兵や軍曹といった階級の者は少なかったはずだ。ほとんどは、保衛部と護衛司令部の人間…つまり将校クラスが見回りを担当していた。」
「そんなエリートばっかりの中、誰一人その女の子を助けようとしなかったんだよ。北朝鮮では、796ナンバーに逆らう事は許されないからな。」
「……」