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夢見る夢子
第2章 松岡尚子の体
翌日、目覚めが遅く
夢子は時計のアラームが鳴っても気づかなかった。
母親に「いつまで寝てるのよ!」と怒鳴られて
ようやく目を覚ました。
慌てて家を飛び出したものだから
うっかりとスマホを忘れてきてしまった。
気づいたのが登校するために
電車に飛び乗った後だっったので
今さら取りに引き返すのも億劫だった。
『まあ、いいかしら…
スマホなしの生活を過ごすのも一日ぐらいなら…』
そう思いながら
いつもはスマホに夢中で車窓の景色など
ほとんど見ることもないのだけれど
あまりにも暇なので
ボンヤリと外の景色を見ていた。
そして、突然に
見覚えるのある線路沿いの家屋を目にして
夢子は思わず「あっ!」と叫んだ。
何事かと周りの乗客が夢子に視線を送ったけれど
そんな視線を無視して
車窓から見える一軒の家に釘付けになった。
葬儀でも行われるのか
その家の外壁には黒と白の幕が張られている。
その家こそ、
昨夜幽体離脱して呼び込まれた家に間違いなかった
私、ここまで飛んできたんだわ…
そう思うと、
昨夜の記憶がまんざら夢ではなかったのだと思った
では、昨夜出会った黒マントにシルクハットの
のっぺらぼうの言っていたことは
本当なのかも知れない。
もし今度、幽体離脱したら
誰かの体の中に憑依してみようと思った。