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夢見る夢子
第1章 プロローグ
その夜の深夜…
体に何かがのし掛かってくる。
ベッドに体が押し込められる感覚に
『あ…来た!』と直感した。
俗に言われる「金縛り」というものだ。
普通の人は、それが恐ろしくて
霊障だと思うものだが
何度も経験していると
体がクタクタになっているときの生理現象だと
理解出来るようになる。
やがて体がフワッと軽くなると同時に
夢子の心の意識だけが体を離れて浮き始める。
幽体離脱が始まったのだ。
いつもは天井付近に留まって
深い眠りに落ちている自分自身を
見下ろすのだけれど
この夜は何かの強い思考に導かれるように
夢子の心が瞬間移動した。
気づくとそこはどこかの家の前だった。
煌々と明かりが灯り
その家から出てくる人たちは皆、
ハンカチで目頭を押さえて嗚咽していた。
奇妙なのは、そんな人々を
静かに見送る男女がいたのだった。
一人は背の高い男で
黒マントにシルクハットを被っている。
もう一人は女性で透き通るドレスを身にまとい
ドレスの下には下着を身につけておらずに
たわわな乳房と漆黒の陰毛がモロに見えていた。
そんな奇妙な格好の男女なのに
家から出てくる人々は気にもかけずに
二人を無視していた。
この男女はどこを見つめているのだろうと
夢子の心は二人に並んで同じように視線を向けてみた。