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I‘m yours forever
第3章 美月は何も知らない
「黙れ」
ついに怒りが頂点に達した俺は、泣き喚く彼女を拳で殴りつけた。体勢を崩し、フローリングへと叩きつけられた美月の身体に俺は馬乗りになった。
「撤回しろ、美月。」
すっかり恐怖で硬直している彼女の首元に手をかけながら、威圧的に命令した。
だが彼女は首を左右に振り、拒絶を示す。
なんだ
死ぬ程、婚約指輪が欲しいと叫んだお前も
所詮、過去の女と同等だったのか
悲鳴を上げようとした彼女の頸部を圧迫する。気道が確保出来なくなり苦しみからジタバタと暴れ狂っていた。
だが、その体力も見る見るうちに消失していく。
俺に首を絞められながら、彼女は涙を流し続けた。
その怯えきった瞳を俺は覗き込んだ。
完全に気道が締まり、蝋人形のように動かなくなくなるまで俺は彼女の瞳を凝視した。
狂気に走った己の姿が鏡のように反射していたからだ
ああ、この瞬間だけは
この瞬間だけは俺のものだ。
自分の口角が片側だけ不気味に上がっていく。
底知れぬ独占欲が満たされていくのを、止める術は無かった。
恐怖一色だった彼女の瞳が濁り、虚無的な目へと変化する。
やがて一切の抵抗も見せず、彼女の全身から力が抜けた事を確認すると、俺は彼女の首から手を引いた。
脈と心臓、そのどちらも動いていなかった。
恐らく窒息死に至ったのだった。
彼女の顔面は赤黒く、白目の部分もうっ血していた。
「例え俺が憎くとも離婚を切り出さなければ、お前はまだ生きていられたと言うのに。」
静まり返った廊下に無様な俺の声だけが響き渡る。
刹那的な高揚感は終わった。
今度は尽きる事のない孤独や絶望に支配される。
全て、美月の最後を奪った代償だった。
一気に色褪せた世界の中、扼殺された美月の首に残った俺の指の跡だけは、いやに鮮明に見えた。
走馬灯のように脳裏に美月との夢のような結婚生活が過る。
俺は唇を噛み締めると、その首輪のような傷跡を繰り返しなぞったのだった。