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濡花 ~義理の父親に堕とされていく若妻~
第9章 温泉旅館~終章~
うぐいす色の簡易な着物を着た女性の帯には[松岡]と名札があった。
年齢は33歳。
夫と息子が一人いた。
中居の仕事は6年目の中堅どころだった。
昨年、新しくできたこの旅館のオープンにあわせて前の旅館から移ってきた。

担当となった客は初老の男性と若い女性。
最初からどこか訳ありだとは思っていた。
男性に渡されたチップ。
長い間中居をしていればこんなことはたまにある。
普段よりはずまれたチップに二つ返事で要望を聞き入れた。

内線電話の後、時計を見てそろそろかと腰を上げた。
深夜の静まり返った廊下を大きなお盆を持って歩き、目的の部屋の前に立つ。
物音を立てないようにそっと扉を開け中へ入っていく。
一歩踏み入れただけで、エアコンのせいではないどこか異様な熱気を感じた。
草履を脱いで、板間の先の襖をやはりそっと開けた。

食事をしていた部屋は酷い有り様だった。
座椅子は乱れ、二人分の浴衣は脱ぎ散らかされていた。
そして、寝室の襖は閉じられている。
その向こうに熱気の正体があった。

あられのない女性の喘ぎ声に時折、低い男性の声が混ざっている。
ベッドの軋む音に…「おとうさん…おとうさん…」と甘く切ない声がはっきりと聞こえてきた。

【お父さん?…嘘…まさか父娘なの…】

中居の胸の鼓動が高鳴っていく。
不倫の関係くらいは想像していた。
まさか父娘でなんて…聞こえてくる声や音に襖の向こうで何が行われているかなど明白だった。

中居は足袋を履いた脚を静かに進めた。
足袋が濡れたことを感じる。

【ここでも…してたんだ…】

物音を立てないように慎重に皿を下げていく。
どんなに気をつけても、食器の重なる音はどうしてもしてしまった。
ようやく、食器をお盆に乗せ終えると…隣からは絶頂を訴える女性の声が聞こえてきた。

【すごく厭らしい声…すごく気持ちよさそうな声…】

中居は静かにお盆を持ち上げ、一旦廊下に出た。

「テーブルを拭かないと…」

そんな独り言を呟くと、再び部屋の中へと忍び込むように入っていく。

卓司は小さな物音を聞き取っていた。

【聞こえているんだろ…生々しいセックスの音が…】

騎乗位で花怜を逝かせると、そのままベッドに組み敷いていく。

「さぁ、花怜…私もまた逝かせてもらうぞ…」

セックスに没頭している花怜には隣に人がいることなどわかっていなかった。
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