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濡花 ~義理の父親に堕とされていく若妻~
第17章 夫婦の寝室
「はぁ…すっかり遅くなったな…」

花怜の隣人の黒木利臣はそうぼやきながらオートロックの自動ドアを開けた。
上場企業の部長職の黒木は背も高く、学生時代は陸上の槍投げをしていたこともあり体格はがっちりとしている。
レターボックスから郵便物やチラシを抜き取り最上階の部屋へとエレベーターを上っていく。

通路を歩きながら、水河家の玄関をちらりと見てその向こうの我が家へと向かった。

【奥さん…大丈夫だったのかな…】

鍵を開けて中へと入っていく。
玄関の灯りはセンサーに反応して勝手に点いた。

リビングの灯りを自ら点けてテーブルの上に郵便物を放り投げるとネクタイを弛めた。

妻と娘は今夜は不在だった。
父親の影響を受け陸上部に所属している娘の試合だった。妻も遠征に付き添い二人とも明後日まで帰って来ない。

「せっかく悠々自適なのに残業とはな…」

夕食は会社近くの定食屋で済ませていた。
すぐにビールといきたいところを我慢して寝室に向かうとスーツを脱いで、浴室へと向かった。
シャワーを浴びてTシャツとジャージ姿になるとようやくソファで缶ビールを開け落ち着いた。

ゴクゴクと500ミリ缶を1/3ほど空けるとテーブルに置いた電子タバコに手を伸ばした。

「やめとくか…女はやたらと鋭いからな…」

もともと紙タバコ派だった黒木は妻と娘が臭いと煩くので匂いの少ない電子タバコに変えた。
それでも部屋の中では吸わせてもらえなかった。
もっぱらベランダに出て吸っていた。
一人の時くらい、ビールを飲みながら部屋で吸ってやろうかとも思ったがやめておいた。

戸棚にあったなと思い、立ち上がると柿ピーを手にリビングへと戻った。
適当にテレビのチャンネルを変えながらビールを飲み干すとすぐに次のビールを取りに立ち上がった。

ソファに戻ると、やはり吸いたくなって電子タバコを手にベランダに向かった。
高層階のベランダは安全上からも広い奥行きがある。
それでも風の強い時は出るのを憚られるほどだった。
ほとんど風のないことに安心すると、サンダルを履いて塀のところまで進んだ。
タバコを吸い、深く吐いていく。

階下に望む絶景の夜景を眺めながらタバコを吹かしていると、隣室の窓が開く音がした。

「だめっ……お願いっ……許して……」

囁くような小声でも、切羽詰まるような女性の声が黒木の耳に入ってきた。
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