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恍惚の日々
第2章 正体
「最低限の事だけ教えよう。それ以上の詮索は許さないよ。まあ、さほど何も無いが、ね(笑)」
桐谷はそう言って、
紛れも無く独身
某大学卒
兄弟は両親と共に海外移住
仕事は見ての通り
など、本当に簡単に、ものの1分程で終了した。


「これで終わり。後は聞いても無駄だ。話す気はない。今のところはだが(笑)」

「でも、正真正銘独身だということがわかってよかったです。」

「独身じゃなかったら?」

「今すぐ帰ります。妻帯者とこんなふうに居ることは出来ませんから。」

「それは賛成だな。お互いにとって良くないことだからね。」

「はい。特定のお相手が居てもNGです。」

「モラルとマナーに反する。」

「そういうことです。」

「かなえ、お前を選んで正解だったよ。」

「即断力ですか?」

「ノーコメントだ。もう、質問は受け付けてはいない(笑)」

「はい…でも、嬉しい代償でした。」

「ん?どういうことかな?」

「私、もう何年も付き纏われていたんです。だから、いっそのこと転勤もいいなって考えてて。でも、本気じゃなかった。なのに…」

「なのに転勤の辞令が出た?」

「はい。しかもこんな遠くに。ショックでした、正直。でも、総…淳之介さまに出会えました。不謹慎だと思いますが、靴音から解放され、淳之介さまのおそばで仕事が出来ることに感謝してる私が居ました。」

「かなえにとって、その靴音は今どんな存在?」

「存在…って…」

「忘れた?」

「彼と付き合ってたころは、為りを潜めてて、別れてからは、今度は頻繁になって、怖かったです。」

「今は平気?」

「解らないです。でも、この身体に擦り込まれてる気はします…」


「ところでかなえ?」



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