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恍惚の日々
第1章 誰?
「ただいまぁ。」

「お帰り。ご飯は食べたの?」

「ん?食べてないけど、作っちゃった?」

「今夜は鍋焼きうどんだから、用意は出来てるわよ。」

「ごめん、お母さん。作らなくていいよ、今夜は要らないから。」

「あら、そう…」

「ごめんね。」

私の大好きな鍋焼きうどんは、私の分だけ特別に焼いたお餅を入れてくれる母。

嬉しそうにモグモグ食べる私を見ているのが大好きだと、鍋焼きうどんの時は決まって母が言う。

今夜は、その楽しみを見せてあげられず、ごめんねって思う。

食欲不振の原因は、このごろ頻繁になった、あの靴音に他ならない。


コンコン…
「ちょっと、いい?」

部屋の戸を叩いて母が来た。

「うん。」

「ホットココア、一緒に飲んで?」

「あ、ごめんね、心配させちゃったね。ありがとう。」

ココアを受け取り、母と炬燵に入った。

「お姉ちゃん、なんかあった?」

「………」

「言わなくてもいいよ。でもね、一人で抱え込んだらほんとに身体を壊すから。」

「うん、そうだね。…あのね、お母さん…」


私はついに、何年にも及ぶ、あの靴音の話をした。




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