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恍惚の日々
第3章 裏腹
「やっと落ち着いたようだね?」

「はい。せっかくの旅行ですから、しっかり楽しみたいと思えるようになりました。」

「そうか、それは良かった。」

「淳之介さま?私はこれからどうすれば宜しいですか?」

「まあ、焦ることはないが……脱いでくれないか?」

「はい?」

「私の前で裸体を晒しなさいと言ったんだ。ここに来なさい。」

人が変わったような冷ややかな目で、かなえは凍り付いた。

「出来ないなら、手を貸そうか?」

「いえ…」

「そうだな。私に逆らうことは許さない。」

結んだ紐を解き、暫く動けずにいたが、「かなえ!」の声に、慌ててバスローブを肩から落とした。


「手を避けて。」

「後ろ」

「横」

「仰向け」

「俯せ」

「四つん這い」

「よし。もういい。バスローブを着なさい。」


途中から、涙が零れた。恥ずかしくて辛くて…四つん這いになった時は酷く惨めで…


「泣かせてしまったようだね。かなえ、こっちにおいで。」

ソファーにゆったりと座る桐谷のそばまで行くと、桐谷はテーブルをずらした。

「そこに座りなさい。」

優しい口調に惑わされ、桐谷の足元にかなえは正座した。

見上げると、穏やかな笑みの桐谷がかなえを見下ろしていた。




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