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恍惚の日々
第5章 脱皮
「真似事をするよ。ほんの少し体験してもらう。逆らうことは許されないから、もう、かなえに問うことはない。」

「はい。」

「そうだな。何か言われたら必ずはいと言う。よく出来た。」

「ありがとうございます。」

つくづくも、いい子だと桐谷は思っていた。
返事をしない子や、礼を言わない子は、最近では珍しいことではない。

普通の感覚がどういうものかの定義はわからないが、桐谷が子供だった頃当たり前だったことが、今では『よくできた子、素晴らしい子』となっているように思う。

それを基準に鑑みるに、かなえはおそらく、そういったことを小さい頃からずっと、親御さんに教えられてきたのだろう。

ごく自然に出てくる、かなえのありがとうやごめんなさい、はいやわかりません、などは何故か桐谷にとって耳障りのいいものであった。


「裸になりなさい。」

「はい。」

首輪と手首輪と足首輪が付けられた。落ち着いた赤色の輪には金具がそれぞれについている。パーツ同士を繋いだり、吊す時にも、拘束するにも何にでも使える。

「ほんのり桜色のお前の肌によく似合うぞ。檻に入りなさい。四つん這いだ。」


しっかりとした知識などないかなえだったが、いよいよSMの世界に入ったのだと認識した。
そして、私はM奴隷。
四つん這いで檻に向かいながら、かなえは被虐感に悶えながら中心の蜜を垂らしていた。


この高揚感

この被虐感

この羞恥心


すべてがかなえに身悶えを与え、エクスタシーがすぐそこまで押し寄せていた。




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