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第19章 2 Years ago

「傘を貸そうと、声をかけようとしたら…その子、空に向かってニッコリ笑ってさ……」

そうだ…あの時、雨海を何とかしなきゃと思って…雨空を見上げて無意識に、笑ったんだ…。

「胸の中の猫を…覗き込んで、意を決した様に…どしゃ降りの中を走って行った…。」

「……ふ…ん。」

何故か…涙ぐんできてしまい、返事が鼻声になってしまった。　

「その時…凄い後悔したんだ…。」

ドックン！

「後悔……何を？」

ドックン…。

「傘…貸して…あげれば良かったって…。せめて家まで送ってあげればって…。」

「セイジ…。」

ダメだよ…それ以上言われたら……きっと…止まらなくなる。

「それから…雨が降る度に思い出して…元カノに似てるとかじゃなくて……空に向かって笑った笑顔が…頭を過って…。」　

セイジが俯くと、セットしてないサラサラの前髪が、表情を隠した。

「２年前のあの日……声を掛けてたら…どうなってたんだろうな…。」

そう言ったセイジの声は、今までに聞いた事ないくらい自嘲的で……声が少し震えてた。

もし…あの時、セイジが私に声を掛けてたら…私は、旦那と結婚してただろうか？

ドックン…ドックン…。

私は、ゆっくりセイジの肩に手を伸ばす。

セイジは俯いてた顔を傾けながら、振り向く。

髪の隙間から見えた瞳は、とても切なく揺らめいていた…。