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第1章 魔法使いの末路 ～淫らなる欲に濡れた世界～

「ん……」

フィリアは、目を覚ました。
自分は気を失っていたらしい、と考えを巡らせる。
体を起こして周囲を見渡してみて、驚いた。

「ここは、魔界……！」

ここは一見すると薄暗い森の中のように見えるが、自分が居た人間界とは明らかに空気が違った。
邪気と魔力に満ちた空気が立ち込めている。
呼吸しているだけで、頭がクラクラしてくるような感覚を覚える。

「どうして？ 私、召喚術の呪文を唱えてて……っ！」

そこまで考えて、ハッと気付いた。
呪文の一部を間違ってしまったのだ。
修業中も頻繁に間違え、師匠に呆れられてしまった呪文だ。その時は師匠が何度も助けてくれた。
ようやく完全に覚えて、召喚術は成功。晴れて修業を終え、駆け出しだが魔法使いになれた。
それは、つい先だっての事だ。

「師匠……お父様、ごめんなさい……」

何度も教えてくれた優しい恩師……つまり、偉大な魔法使いである父に、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
魔界に人間が来る事は有り得ないため、魔界から帰る魔法なとあるはずがない。
しかし、悲しんでばかりはいられない。元の世界へ戻る方法を探さなければならない。
万が一、魔界の住民に襲われたとしても魔法で対抗できるはずだ。
フィリアは自分を奮い起たせるように立ち上がると、何か手掛かりはないかと、森の中を歩き始めた。