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激しくしないでっ!
第1章 プロローグ

 その仕草すらエロティックに映ってつい彼女に見とれていると、彼女は俺を見つめて微かに笑った。

 素早い動作で俺の両頬を挟み込み、唇を押し付けてくる。


「ん!?」


 油断していた俺は、彼女にキスされていた。

 しかもそれだけではない。器用に舌を使って、何か小さな粒を俺の口内に送り込んできたのだ。

 舌先に当たってわかった。これは、薬だ。

 細長くてツルツルした感触は、おそらくカプセルか何か。

 俺はとっさに吐き出そうとしたが、彼女に口を塞がれているためそれも叶わない。

 彼女の唇がふいに離れ、耳元で、吐息のような声が囁いた。


「飲んで」


 生温かい息が、鼓膜をなぶる。

 ――ゴクン。

 しまったと思った時にはすでに遅かった。カプセルは、体内へと落ちていく。

 血の気が引くような思いで彼女を見上げる。

 彼女は、うっとりと微笑んでいた。


「すぐに体、熱くなるよ」


 飲んだのは多分媚薬。

 彼女の誘惑に、逆らえるはずがない。

 俺は観念し、強く瞼をとじたのだった。
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