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タワマン〜墜ちた女達〜
第21章 4人目〜椎名風花〜
そこで長い沈黙が訪れる。風花が何を考えているか、わからない。狩野の提案を了承するのか。拒否するのか。脅迫されたと訴えるのか。狩野はじっと風花の言葉を待つ。

「狩野さん…。あなたとは確かにホステスと客の関係を続けられたら良かった…。でも…どちらにしても…それは無理なのよ…。」

長い長い沈黙の後に、唐突にそんなことを言い始めた。

「…?どういうことだ…?」

「1億6千万…。父の資産を売却して…私の貯金も注ぎ込んでも…それでも足りないのが、1億6千万あるわ…。残るのは父が住むマンションと、このマンション。いくらNo.1ホステスともてはやされても、さすがにその額を準備するのは難しいわ…。父にいたっては働いたところで現金は準備できない。」

「そりゃ、まあ、そうだろうな…。」

「だから…身体を売るしかないと思ったのよ…。店に来るお客に対してね…。」

「やはりそうなるか…。」

「私としても身体を売るなんてプライドが許さない。だから、ここ数週間、同伴も積極的にして、なんとかお金に繋げようとはしてみたわ…。でも…届かない…。このままだと、父は捕まり、私はその借金を背負わなければいけない。」

「俺が言うことではないが、あなたが背負う必要はないと思うが…?」

狩野の言葉に風花が苦笑する。

「ええ、そうね…。でも…それはだめ…。借金まみれになっても親は親。私の大事な家族。母が亡くなっても父は大切に育ててくれた。何不自由なくね…。水商売してるけど、それは単に好きな仕事なだけ。別にお金に苦労してとか、親に反発してとかではないしね…。」

「そうか…。いい父親ではあったんだな…。」

「そう…。私の大切な家族…。狩野さん…。いいでしょう…。あなたの融資を受けます…。担保は私の身体…。それでいいのよね…?」

風花は決意の光を宿した瞳で狩野を射抜く。強い。強い光だ。その光が強ければ強いほど、狩野はゾクゾクと欲情してしまう。この強い光を自分の欲望で汚すことが喜びなのだ。

「ええ…。了承してくれて、俺としても嬉しいですよ…。必要なら念書でも書きますよ…。」

「そうね…。一応、契約書は作りましょう…。狩野さんが作ってくださる?」

「わかりました。もろもろ用意して…。明後日、もう1度会いませんか?明後日、手続きをして…。あなたを抱くのはその後にします。」

「それでいいわ…。」
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