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タワマン〜墜ちた女達〜
第21章 4人目〜椎名風花〜
狩野の目的はそれだけである。

風花は狩野の言葉にすぐには反応しない。瞳には若干の軽蔑の色が滲む。

「狩野さん…。私はあなたのことを誤解していたようね…。もっとマシな人だと思ってたわ…。」

「軽蔑されても大いに結構。それで風花さん、あなたを手に入れられるなら。」

「…ある意味、それだけ私に執着してくれるのは女としては自信にはなるけれど…。どうして…?狩野さん。あなたならもっと普通に私に近づけたはずよ…?こんな脅迫めいたことをしなくても…もっとスマートにできたはず。」

風花が狩野を諭すように言う。

「昨日までの狩野さんには私も悪い印象はなかったわ…。お店の娘達にも人気がある。普通に口説いたら…あなたに寄ってくる女性はいくらでもいるでしょう?」

「そうですね…。確かに今の俺なら…。金にも時間にも余裕のある今の俺なら、女性には困りはしない。ただ…それじゃあだめなんですよ…。」

「なぜ…?何がだめなの…?」

「このマンションに来て…。あの会議を見て…。上階に住む偉ぶったあなた達を墜としたい…。そう思ったんですよ…。」

狩野は礼奈達にも話していない本音を吐露する。

「俺はつい最近、大金を手に入れて成り上がった。そんな時にあの会議で見たあんた達が非常に傲慢に見えた。まあ、社長夫人や社長令嬢。根っからのセレブ達を見た僻みさ…。それだけなら良かったが、その後に強烈な欲求に駆られたのさ…。そんなセレブ達を墜とし、俺の前にひれ伏させるという欲求に…。」

「思っていた以上に俗物だったわね…。それで…2億も出して、私を買おうと…?」

「ああ、そうだ。別に恋愛ゲームをしたいわけじゃなく、風花さん、あなたを屈服させたいのさ。俺は…。そのためなら2億だろうが払うさ…。」

「私が断ったら…?」

「別に…何もないさ…。確たる証拠があるわけじゃない。俺の話を信じず、断るのも構わないさ…。それであなたが困っても助けはしないが…。脅されたと警察に訴えても文句は言えないしな…。」

「そう…。残念だわ…。あなたとは仲良くなれそうだったのに…。」

「ああ、俺も残念だよ…。普通に客として同伴でもして、楽しくデート出来れば良かったが…。俺自身の欲求が許してくれない。止まるつもりもないんでね…。」

お互いに淡々とした口調で話しているが、内容は脅迫に近く、どうやら風花は拒否するようだ。
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