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放課後のマドンナ
第9章 本当の愛

恭子との最後の情事が呆気なく終わり
真っ赤な軽四で淳一を家まで送り届けてくれた。

「さよなら淳一…
幸せになるのよ。
君の事を大事に思ってくれている子が
すぐ身近にいるわ」

小百合の名を出すべきかどうか迷ったが
恋愛ばかりは本人たちの意思が大事なので
恭子は敢えてぐっと我慢した。

「恭子…
僕、恭子と別れたくない」

淳一は家の前まで送ってもらったにも拘らず
なかなか車を降りようとはしなかった。

「せめてもう一度キスをさせてくれないか?」

淳一が運転席の方に身を乗り出すと
それを嫌うかのように
恭子は淳一から顔を背けた。

「もう本当にダメ!
私は人妻よ、もう淳一が知っている私じゃないの」

冷たく突き放されて
淳一はポロポロと涙を流しながら車を降りた。
恭子は、手を振る事もなく真っ直ぐに前を見つめて
車を発進させた。


家に戻ると母の美佐恵が「あら、遅かったのね」と
淳一の背に向かって声を掛けたが
何も語らずに淳一は真っ直ぐに
自分の部屋へ閉じ籠った。
淳一の引きこもり生活が始まった瞬間だった。


2日経っても3日経っても
淳一は部屋から出てこない。

「なんだ、淳一の奴、
まだ部屋から出てこないのか?」

4日目の朝、とうとう痺れを切らして
父の正昭が美佐恵に「どうなってるんだ」と
尋ねた。

「さあ…それが私にもよくわからないんです」

まったく!お前が家に居ながら何をしてるんだと
正昭は美佐恵を叱りつけたかったが
堅物とはいえ、美佐恵を溺愛している正昭は
それ以上何も言えなかった。


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