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放課後のマドンナ
第9章 本当の愛
淳一の食事をトレイに乗せて
部屋へ運んでゆくために
階段を昇る美佐恵の尻をみながら
まさか息子の淳一が引きこもりになるなんてと
正昭はどうしていいのか頭が混乱していた。
『教育が厳しすぎたのだろうか…』
自分でも昭和の頑固者だとわかっている。
これは若い頃からそうだった。
大学を卒業して
今の会社に就職してからも
人付き合いが苦手で、
営業部に配属された時は
今すぐにでも辞めてやろうかとも思った。
それを思い止まらせてくれたのが美佐恵だった。
彼女は正昭がもうすぐ30歳になろうかという頃
短大を卒業して営業事務として配属されてきた。
美佐恵は性格が明るくて
たちまち営業部のマドンナ的なポジションを得た。
誰が彼女を口説き落とせるかと
営業部の面々は
こぞって彼女にアプローチを掛けたが
誰一人として彼女を落とせなかった。
あれほどの美人なんだから
きっと付き合っている男がいるんだよ
そんな風にいつしかそんな噂が立ちはじめていた。
ある日、顧客データーをまとめるために
正昭は一人会社に残って残業していた。
『これで最後だ…』
ようやく仕事が終わった…
やれやれ、ラーメンでも食いに行くか…
「夜遅くまでご苦労様です」
不意に背後から声を掛けられて
正昭は飛び上がるほど驚いた。
それほどまでに仕事に集中していたのだった。