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第45章 無断外泊

「それでは本日はお疲れ様でした。」

「ありがとうございました。」

施設のロビーでおじさんたちと別れた。私は父に連れられて食事に向かう。
父と食事をするのも久し振り、むしろ２人での食事なんて記憶を辿っても思い出せない。

「梨果、何が食べたい？」

歩きながらそう言い振り返った父の老け込んでやつれた姿が印象的だった。

「お父さん普段ちゃんと食べてるの？」

「ああ、どうかな…。」

「家に帰ろう。私が料理をしてあげる。おじさんの家でかなり上達したんだから。」

「家？いいのかい？かなり散らかっているけど…。」

「…うん。」

地元の駅まで帰り、父とスーパーで買い物をした。

「たった半年なのに懐かしい。」

家の前まで来ると当たり前だった夏前までの日常を思い出した。母が不在で荒れた庭だけが当時と違っていた。

父が玄関の鍵を開ける。

「どうぞ。」

「…おじゃまします。」

実家なのにおじゃましますも変だと思ったけどなんとなく口から出てしまった。

ダイニングに２人が持っていたスーパーの買い物袋を置く。父の言っていた通り部屋はかなり散らかっていた。

「うわっ！これは掃除から始めないと…。」

「済まない…。指示をしてくれれば私も働くよ。」

「本当にお父さんはお母さんいないと何もできないのね。」

「済まない…。」

「ふふっ、お父さんさっきからそればっかり。」

リビングとダイニングを掃除してキッチン周りを掃除した。そして冷蔵庫の中の期限切れのドレッシングや調味料を片付けた。

「これでやっと料理のスタートラインに立てた。」

「ありがとう梨果。だいぶ片付いた。」

「私は料理を始めるからお父さんはくつろいでいて。」

「ああ、済まない。」

スーパーで買い揃えた材料で料理をする。
トマトペーストを使った鶏肉料理を作った。以前から父の好物だったけど私が父に作るのは初めてだった。


「おお、梨果。とっても美味しいよ。」

「本当？！嬉しい。おかわりもあるからたくさん食べて。」

「この半年でかなり成長したんだね。」

「いろいろあったからね。」

「いろいろか…。」

「…うん。」

好きな人ができてその人の為に頑張って。…そしてその人に全てを捧げて…なんてことは言えないけど。