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愛とは違う
第2章 素直に言えば?

 初めて会ったとき、首を簡単に折られるんじゃないかって少しだけ過った。
 死を意識するほどじゃなかったけど。
 本当に強い人に会ったって、確信したのってあれが最初だったかもしれない。
 ヒソカは強い。
 それは確たる事実として記憶された。
 そうだ。
 ヒソカは強いから、俺を殺すことだっていつでも出来るかもしれない。
 あの日、看病に来てくれたときだって、弱ってた俺ならリンゴを剥いたナイフですら。
 今、は?
 息が苦しいほど腕が締められて、少しパニックになりそう。
 でも、殺意が感じられないから。
「ヒソカ。俺まだ熟してないから、もう少し待って」
 力が弱まる。
「でーとだって、まだ」
「キミと会うのはいつもデートだよ♦」
 吐息混じりに耳元で囁かれて、うなじを掻きむしりたい衝動に駆られる。
 ねえ、どんな顔で言ってるの。
 それ。
 笑ってる?
 無表情?
「……ヒソカ」
「今夜はどこに泊まる?」
「え? 決まってな……」
 肩を引き剥がすように身を離したヒソカが穏やかな表情を見せた。
 怖いほど。
 余裕ある表情を。
「さっき会った広場に日が沈んだらおいで♣」
 そう言い終わると立ち上がって、声を掛ける前に森の中に消えてしまった。
 まだ、抱き締められてるみたいに肌がじんじんしてる。
 手が添えられてた服には、赤いシミが付いていた。
 ああ、やっぱり。
 ドッキリテクスチャーだったんだ。
 足元に落ちてた葉の切れ端を摘まむ。
 まだ、ヒソカの気配が残ってるみたいだ。
 不思議な感覚。
 空を仰ぐと、薄桃色。
 もうすぐにでも日が沈みそう。
 広場で待てば、またヒソカに会える。
 約束を持って会うのは、闘技場ぶりなんじゃないかな。
 きゅ、と葉を握る。
 今更恐怖が込み上げる。
ーもう、アイツに関わるなー
 キルアの真剣な声が警告する。
 会ったときから警戒してた。
 ヒソカは危険だから。
 それはわかってるけど。
 俺が、バカだからかな。
 キルアみたいにヒソカを避けることなんて出来ない。
 気紛れで、残酷で、何を考えて行動してるのかわかんないけど、闘ってるときはお互い先を読み合えるのが楽しくて。
 相性が、良いからかな。
 ヒソカ。
 広場に行ったら、わかる?
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