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愛とは違う
第4章 小休止とイこう
急にヒソカの右手が俺の左腿の上に載せられたからビクッと飛び上がりそうになる。
壁際だから隣の人にぶつかる心配は無いけど、トントンと指をランダムに動かしてくるのがこそばゆい。
「なんで」
「いやあ、なんだか思い出しちゃってさ❤」
その先は聞かなくてもなんとなくわかった。
あの夜のこと。
せっかく楽しい話をしてたのに。
中断してまで言うこと?
「そんな怒るなよ♠」
「怒ってないよ。ただ結局ヒソカは全然教えてくれないからさ。どうして強くなりたくなったのかとか、誰か目指してる人はいるのかとか」
「そんなこと聞いても戦略に入れるわけじゃないだろ♣️ 参考にされても予想ができて興ざめだし♦️」
何ザメ?
わからないけど、なんとなくその話から遠ざかりたいのは伝わった。
キルアとなら延々とできるのに。
どうしたら強くなる。
何を学ぶ。
誰をイメージする。
その中にはヒソカもいて。
食べ終えた串をポキリと折って、グラスに載せる。
俺のグラスなんだけど。
「ゴン。食後の肩慣らしってやつ、それ触らずに退けてみてよ♣️」
「触らずに? 簡単じゃん」
広場で試したようにグラスの中の水に念を流し込み増幅させる。
串に水面が触れて不安定に縁まで追いやられると、コツンとカウンターに濡れた串が落ちた。
「正解だけど不正解❤」
ヒソカは串を拾ってもう一度グラスに乗せると、もう一本の串を手に取った。
「触らなくても武器は使える♠」
手首のスナップを聞かせて串同士をぶつけたかと思うと、からんと二本とも落ちた。
ずるい。
いや、鬼ごっこの時と同じ。
アイディアだ。
「でもズルだよ」
「そう❤ 勝負ごとはルールにさえ則ればいくらでも同じようなズルが生まれる♠」
たしかに。
確かにそうだけどさ。