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坊ちゃまと執事 〜或いはキャンディボンボンの日々〜
第3章 ドクター・アーレンベルグの恋
「もう帰っちゃうの?アンドレア…」
晩餐も食べてゆくと思っていたアルフレッドは駄々を捏ねるようにアンドレアの腕に縋った。
アンドレアはその美しい貌に困ったような笑みを浮かべながら、アルフレッドの頭を撫でた。
「…すまないね、アルフレッド。…用事を思い出したのだ。今日中にロンドンに戻らなくてはならない」
セシリアも不思議そうに首を傾げる。
「…いくら大事なご用事でもそんなに急に帰られなくて良いのに…」
「また、寄せて貰おう、セシリア。…さあ、車に乗って」
さりげなく急かすアンドレアに、オスカーは近づいて声をかけた。
「…アンドレア様、カフスボタンをお忘れではありませんか?…客間に落ちておりました」
白いリネンに包まれた黒瑪瑙のカフスボタンをそっと差し出す。
アンドレアの端正な貌が強張る。
…アンドレアとリヒャルトが激しくくちづけをした際に外れたものだろう。
アンドレアは
「…ありがとう…」
と、受け取りポケットに大切そうに仕舞った。
そして
「…リチャードに…いや、リヒャルト・フォン・アーレンベルグ先生に…よろしく伝えてくれたまえ」
と、オスカーに言った。
「…はい。アンドレア様…」
そのまま車に乗り込もうとして、ふとオスカーを振り返り、尋ねた。
「…アーレンベルグ先生は、どんなドクターだね?」
オスカーは眉ひとつ動かさずに答える。
「…生まれてこの方、あんなに変わり者のドクターを私は存じ上げません」
アンドレアは笑った。
オスカーは少し微笑んで付け加えた。
「…けれどとても他人の痛みがお分かりになる優しいドクターです」
アンドレアは意外なものを見るように、目を見張った。
そして、穏やかに笑い頷いた。
「…そうか…昔と変わってないのだな…」

セシリアが待ちきれないようにアンドレアを呼ぶ。
アンドレアは手を上げて合図を送る。
「…では、失礼するよ。…今日はここに来られて良かった…」
「いつでも、お待ち申し上げております。…おそらくドクターも」
アンドレアはじっとオスカーを見ると、寂しげに笑った。
「…いや、私がもう彼に会うことはないだろう」
そうきっぱり言い捨てると、車に乗り込んだ。

車はクラクションを鳴らし、あっと言う間に緑の小径を進み、やがてそれも見えなくなった。

しかし、オスカーとアルフレッドは手をつなぎながら、いつまでも彼らを見送っていた。
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