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第8章 赤い泪

私の眼球はゆっくりと原さんの居場所まで浮遊する。

毎日毎晩、私が寝ると眼球は私の瞼から飛び出して行った。

そして・・・

原さんと様々な女性が同衾している姿をじっと何時間も映し出す。

時にはくすくす笑い合い
時には私を小馬鹿にし
時には複数の女性がベッドに入る。

見たくもない聞きたくもないその情景を
私は毎日毎晩、感じながら寝る。

私とのデートであくびをしている原さんが
「昨晩、事務次官と料亭でこれからの日本について白熱してしまってね」
と優しく笑うが
昨晩は原さんと3人の女性との性行為を私も朝までベッドの上から見ていた。

見たくない。
知りたくない。
逃れたい。

何度思っても、眠った私の身体から眼球は浮遊し続けた。

眠らなければいいのだろうか？
そう思って私は極限まで起きている。

フラフラになりながら
気を許した瞬間にふと意識は睡眠状態に入る。

極限まで我慢した研ぎ澄まされた感覚はなお一層原さんの心のうちまで映し出した。