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第3章 接触

聡が用意したエロ本はＡＶ女優が美しく写っているものではなかった。
男と女が絡み合う光景を生々しく表現した、本当の意味でのエロ本だった。
無論、国内で販売されているものなのでモザイクやぼかしは入っているが若い女の子が見るには十分過ぎるほど卑猥なものだった。

（もう少しグラビアみたいなソフトな本にした方が良かったか…。）

そう不安に思ったのは、あの日以来、小陽が公園を通らなくなったからだ。
読む前に捨てられたのか、それとも刺激が強すぎて恐怖を感じさせてしまったのか、それを測るものは何もない。

聡にはただ待つことしか出来なかった。

（もう３年も待っている。あと１、２年増えたところで別に気にならないさ。）

そう思ってはみたものの、釣れかけた大魚を逃がしてしまった感覚はどうしても拭えなかった。

それから２週間が経過したある日のことだった。
失敗に終わったと思っていた聡は、別の獲物がいないかと公園側カメラの録画データを早送りで確認していた。

（んっ！？）

早送りをしていたため、危うく見落としそうになったが、明らかに見覚えのある人物が横切った気がした。
慌てて巻き戻し、今度は通常の速度で再生してみる。

「間違いない！」

エロ本を持ち帰ったあの子、つまり小陽だった。

（この道を避けていたわけではなかったんだな。）

少しだけ聡は安堵した。
ただ、小陽の歩き方が不自然だったことが気になっていた。
今までは真っ直ぐに通り過ぎるだけであったが、なんとなく辺りを気にしている様子だった。
しかも歩みが遅い。

（警戒しているのか？んっ…。いや、違う！）

聡はスロー再生にしてはっきりと確信した。

（あの子は間違いなくベンチの方を見ている。）

血流が下腹部に流れ込むのを感じながら聡は冷静になるようにと自分に言い聞かせた。

「まだだ。焦るな。時間はたっぷりある。」