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蜜愛~男になった女~
第3章 【白桜記】 其の三・巡る想いは
信頼は眩しげに眼を細めて高嶺桜を見つめていた。葉桜となった樹に陽光が降り注ぐ。
信頼はまるで他人事のように淡々と言った。
「その挙げ句、女は典姫を生んで死んだ。愛していたわけでも惚れていたわけでもなかった。深く考えもせず、情すらなく抱いた女が出産で亡くなった―。そう思うと、流石のわしも後味の悪い想いを拭えぬ。典姫はあの女に似ている。わしは怖かった。典姫を見て、自分が死に追いやった女を思い出すのが怖かったのだ」