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蜜愛~男になった女~
第4章 第二部【こぼれ桜】 其の一 始まりの桜
「殿―」
 おさとの方が見上げると、信頼は淡く微笑した。穏やかな笑顔には覚悟の色がある。
「そなたの気持ちは判っている。だが、最早後戻りはできぬのだ。わしを信じてついてきてくれる者たちのためにも、その信頼を裏切ることはではきぬ」
 信頼は言うと、長松丸をそっとおさとの方に手渡した。縁側に立つと、眩しげに眼を細める。その視線は、白っぽい花をつけた高嶺桜に向けられていた。朝夕はまだ肌寒いけれど、日中の陽差しはかなり強い。
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