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第4章 第二部【こぼれ桜】　其の一　始まりの桜

「そなたの信ずるでうすとやらの教えは、人をむやみに殺してはならぬというのであろう」
　ふと呟いた信頼の顔を、おさとの方は愕いて見つめた。おさとの方は隠れ切支丹(キリシタン)である。かつては父盛綱と共に屋敷で小さなマリア像に祈りを捧げていた。徳川幕府の治世下、切支丹はご法度であり、見つかれば厳罰に処される。ここ河北藩においても切支丹は厳重に取り締まられている。