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蜜愛~男になった女~
第5章 第二部【こぼれ桜】 其の二 水面下の計略
「さりながら、殿」
 なおも何か言いかけるのに、信頼は不機嫌も露わな声で言う。
「わしがわざわざ参らずとも良かろう。分家筋から誰か―そうじゃな、信豊をわしの代理に立てて出府させよ」
「はっ」
 が、襖の向こうからの気配は一向に消えない。信頼は苛立ちを滲ませた声で怒鳴った。
「判らぬか。わしは今、愉しんでおったところなのだ。無粋な真似もたいがいに致して、疾(と)く立ち去るが良い」
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