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第6章 第二部【こぼれ桜】　其の三　散る桜、咲く桜　

　彼女らは信頼の前に馳走の並んだ膳を並べ、しずしずと退ってゆく。侍女が姿を消すのと入れ替わるように打掛の裾を引いた若い女が立ち現れた。
　信頼は眼を瞠った。
「これなるは我が妻の姪、琴江と申しまする。よろしうにお見知りおきを」
　美しい女であった。年の頃は十八ほど、臈長けてはいるが清純な美しさのおさとの方とは異なり、男心を惑わすような、妖艶な美貌であった。