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第6章 第二部【こぼれ桜】　其の三　散る桜、咲く桜　

「ええい、煩いッ。河北藩主、佐伯信頼、我が娘こうをよくも酷(むご)い殺し方をしてくれたな」
「―こう？」
　信頼には憶えのない名である。が、浪人は皮肉げに口の端を歪めた。
「お前はこうの名さえ憶えてはおらぬというのか。私は今は浪々の身だが、その昔は河北藩士であった。娘のおこうは河北城の奧向きに腰元として奉公しておったのだ。それを、お前は手込めにして殺した」