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蜜愛~男になった女~
第6章 第二部【こぼれ桜】 其の三 散る桜、咲く桜
「ずっと、わしの傍にいてくれ。聡一郎」
信頼はおさとの方の腕の中で泣いていた。
あたかもこれまでの二十三年間、信頼の心の底に澱のように淀んだものすべてを洗い流すかのような涙であった。
「殿、それに、どうしても殿にお伝えしたいことがございます」
おさとの方の悪戯っぽい物言いに、漸く顔を上げた。涙を見せたことを恥ずかしく思っているのか、少し照れ臭そうな表情が少年のようで、おさとの方は思わず微笑んだ。