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第6章 第二部【こぼれ桜】　其の三　散る桜、咲く桜　

　信頼がおさとの方を引き寄せる。
　おさとの方は信頼の肩にそっと頭を預けた。
　空はいつしか茜色から菫色に変わり、細い月が次第に輝きを増している。庭にも宵闇の気配が立ちこめ始めていた。ほんのわずかに残った白い花が薄い闇にほの白く浮かび上がっている。おさとの方は無事に還ってきた愛する男に寄り添いながら、いつまでも白い花を眺めていた。
春が逝こうとしていた。