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蜜愛~男になった女~
第7章 番外編【櫻の系譜・壱~雪時雨(ゆきしぐれ)~】
 廊下を歩いていた長儀子は物陰でふと立ち止まった。少し手前から、嬌声が響いてきたからだ。少し甘えたような女の声はねっとりとまとわりつくようで、何とも形容のできぬ不快感を感じる。
「殿、本当でございますの?」
 媚を含んだ女の声音に、男の声が重なった。
「構わぬ、好きなだけ摘んでゆくと良いぞ」
 長儀子は愕然とその場に立ち尽くしていた。けして立ち聞きするつもりもなかった。眼の前で痴態を演ずる良人と側妾の姿に、凍りついたようにその場に立っていたのだ。
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