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第7章 番外編【櫻の系譜・壱～雪時雨（ゆきしぐれ）～】

　お千世は来る日も来る日も、信純を待ちながら、庭の桜を眺め続けた。やがてお千世は病の床に伏すようになり、ついに恋しい男に振り返られることもなく若い生命を散らした。時に十八歳であったという。
　この哀しい逸話から、この桜はいつしか〝高嶺桜〟と呼ばれるようになった。望んでも、けして手に入らぬ男の愛を望んだ、お千世の話にちなんだ呼び名であった。