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第8章 番外編【櫻の系譜・壱～雪時雨（ゆきしぐれ）～】　弐

「そのように見つめてばかりいても、花は咲かぬぞ」
　皮肉げな物言いは信頼だと判っていたけれど、頓着しなかった。
「相変わらず情の強(こわ)い女よの」
　突如として現れた信頼は、どうやら長儀子が近頃、ここに一人でやってくることを知っているらしい。長儀子は、信頼にそのことを教えたのは乳母の琴路だと知っていた。忠実な乳母は信頼の子を生むのが何よりの長儀子の幸せと信じ、何とか若い夫婦の間を取りもとうとしているのだ。